研究記録 第42-B:
『オスーナボタン伝説』
〜押すなと書かれたその瞬間、すべては始まっていた〜
発行:うそこ大学 ボロシゲ同好会
調査班:手癖制御学研究ユニット「ポチルナ7号室」
概要
『オスーナボタン伝説』は、スパテスミファコ後期に開発されたとされる精神干渉型ゲームである。ジャンルは公式には「禁止型アクションアドベンチャー」と記録されており、ゲーム中の目的はただひとつ。
「そのボタンを、絶対に押すな」
しかし、ゲーム開始直後から一貫して“ボタンを押す誘惑”が連続して襲いかかるという、極めて矛盾的な構成を持つ。
パッケージとカセットの特徴
- パッケージ正面に、大きく「押すな!」の文字
- カセット本体に、実際に物理ボタンが1つ付いている(しかも押しやすい)
- ボタンを押すとピクリとも動かない(ように見せて内部フラグが更新される)
- 説明書はたった1ページ:
「このゲームにおいて、ボタンを押す行為は絶対に禁止されています。押したらどうなるかは誰にも分かりません。」
ゲーム内構造(推定)
シーン | プレイヤーへの誘導 | 裏で起こること(解析) |
---|---|---|
タイトル画面 | 「PRESS BUTTON TO START」 | 押すと“破滅フラグ1”が内部で立つ |
ステージ選択画面 | 「押せばボーナスステージへ!」 | 押すと実は通常ステージへ戻される |
会話中の選択肢 | 「A:押す」「B:もっと押す」 | 実はBを選ぶと裏エンディングルート |
エンディング直前 | 「押さなければ世界は救われる」 | 99.9%のプレイヤーが押してしまう |
押さずに進んだルート | 「あなたは…本当に、押さなかったのか?」 | システムが自壊を始める |
主なプレイヤー被害報告
- 「説明書を読まずに始めたら、1ボタンで即エンディング(BAD)だった」
- 「押すと音が鳴って“押したの、知ってるよ”と表示された」
- 「全編通してAボタンを押さずにクリアしたのに、クリア画面で勝手に押される演出が入った」
- 「押さないつもりで手を置いたらコントローラーが勝手に押し込んできた」
- 「押すのをやめられなくなる中毒性があった。怖い」←※未証明
主な研究対象要素
項目 | 解説 |
---|---|
「押すなボタン」カセット構造 | 押してもカチッとしか言わないが、押された回数を内蔵カウンタが記録 |
BGMの変化 | 押すたびにBGMの音階がほんの少しだけ低くなっていく(最大で聞き取れない音域に) |
押さないルートの存在 | 本当に押さずに最後まで行けると、画面が暗転したまま終わる |
謎の裏メニュー「PUSH4EVER」 | 特定タイミングで8回押すと出現。中身は空。戻るにはさらに12回押す必要がある |
推測される制作者の意図
『オスーナボタン伝説』は、“プレイヤーの意志”そのものを試す設計となっている。
「押してはいけないと分かっていても、人は押してしまう」
——スパテスミファコ時代の開発者「フミヤマ」氏の言葉(※存在未確認)
これは、プレイヤーに対するインタラクティブな心理実験であり、
ゲームという媒体の中で「行動しないこと」を選ばせる、極めて先鋭的な試みであったと考えられる。
エンディング画面(⚠️ネタバレ注意⚠️)
A. ボタンを押した者の結末(通常到達率:99.6%)
ゲーム冒頭で現れる赤いボタンを押してしまったプレイヤーが辿り着く、通称「既知エンド」。
画面に現れるのは、以下のメッセージ:
知ってたよ
※白いピクセル文字で、黒背景に表示されるのみ。
この演出は、システムそのものに“意志”があったかのような含みをもたらし、
「押すな」と言われたことが、むしろ誘導であったのでは?という深読みを生む。
さらに、
- BGMは静寂(無音)
- 約30秒後、唐突にゲームがタイトル画面へ戻る
- セーブデータには「押した記録」が焼き付き、以降は別エンディングに到達不可(※噂)
B. ボタンを押さなかった者の結末(理論上到達可能率:0.4%未満)

全ての誘惑に抗い、物理カセットのボタンにも触れず、ゲーム内の選択肢でも“押す”を選ばなかった者だけが見ることができる、真のエンディング。
黒い画面に、白いピクセル文字でこう表示される:
ボタンを押さなかた
あなたこそ英雄だ
ここで注目すべきは、2つの点:
1. 「押さなかた」という誤字
正しくは「押さなかった」だが、「っ」が欠けている。
この異常は初期ロットでも後期でも修正されておらず、あえて放置されたとされる。
以下、考察されている説:
説 | 概要 |
---|---|
技術的制限説 | 「小さい“っ”」は特殊文字であり、初期スパテスミファコ用フォントROMに存在しなかった。代替表示ができなかったため、未実装。 |
意図的誤植メタファー説 | 「完全な行動は存在しない」「誤字すらも含めて美しい」という制作側のメッセージ。 |
押さなかった証説 | 「“っ”を押すことで完成する」=押さない者だけが完成させない=“不完全こそ真の証”という哲学的設計。 |
伏線説 | この誤字は、次回作『オスーナボタン伝説II』の冒頭セリフとリンクする隠し符号。現在は未発見だが、内部ROMにフラグだけ存在していた。 |
2. 表示される時間と演出
- メッセージは30秒間のみ表示
- ゆっくりと文字が“ブレ”ながら消えていく(ノイズのような演出)
- その後画面が完全に暗転し、以後一切操作できなくなる
- 電源を切ると、次回起動時にカセットが熱を帯びていることがある(※都市伝説)
英雄エンドの記録認定(ボロシゲ同好会内)
『オスーナボタン伝説』における「ボタン未押しエンド到達者」は、2025年現在において公式確認者ゼロとされている。
ただし、以下の証言が存在する:
「弟が昔、全く操作せずに放置していたら“あなたこそ英雄だ”が出た気がする」
——投稿:東京都・ニイボシさん(1998年頃の記憶)
総括
『オスーナボタン伝説』のエンディングは、ボロシゲにおける最も矛盾に満ちた終焉演出である。
「行動しない者にだけ真実が与えられる」——
それはまるで、プレイヤーの内面を試すような、鏡のような体験なのかもしれない。