現物が見つからない
カセットも説明書も存在しない。しかし「持っていた」という人だけはいる。

USOKO-SYSTEM 8BIT
――そのゲーム、見た者すらいない。攻略した者など存在しない。
なのに、思い出してしまう。――
名前は思い出せない。
どこで遊んだのかも分からない。
友達の家だったような気もする。夢だったような気もする。
「あのゲーム、確かにあった気がする」
ボロシゲ同好会は、存在していたかどうかすら定かではない伝説のレトロゲーム「ボロシゲ(まぼろしゲーム)」を発掘・研究・記録する、うそこ大学公認サークルです。
この研究分野を、私たちはゲーム記憶考古学と呼んでいます。
記録が残っていないゲームほど、研究価値が高い。
単に古いだけではボロシゲになりません。次の特徴を重点的に調査します。
カセットも説明書も存在しない。しかし「持っていた」という人だけはいる。
タイトルは不明なのに「4面のボスだけ巨大な消しゴムだった」など、どうでもいい部分だけ鮮明。
RPG、パズル、あるいはテレビ番組だったという証言まで同時に存在する。
初めて聞いたタイトルなのに「ああ、それ知ってる気がする」と思ってしまう。
記憶、噂、夢日記、落書き、古いノートから未知の候補を探します。
「友達のお兄ちゃんが持っていた気がする」程度の情報も逃しません。
断片的な証言から、ジャンル、操作、ステージ、敵、アイテムを推定します。
残された記憶をもとに、画像や映像を研究用復元資料として制作します。
ゲーム本体より先に攻略チャートや隠しコマンドが判明する場合があります。
パッケージ、説明書、広告、CM、攻略本、雑誌記事まで再現します。
ハード、メーカー、シリーズ、移植版、海外版を含む文化全体を調査します。
最も存在した気がするのに確認できなかったゲームを年に一度表彰します。
現物がないことは、存在しなかった証明にはなりません。押し入れ、親戚の家、あるいは記憶のどこかに眠っています。
「たぶん」「なんとなく」「夢だったかも」は、重要な研究用語です。
地域差、移植版、非公式続編、記憶変異など、あらゆる可能性を検討します。
資料不足を理由に止まらず、「もし存在したなら、たぶんこうだった」を甦らせます。
発見された資料を独自基準で分類します。
カセット、ディスク、説明書などの物証。ただし本物の保証はありません。
写真、映像、雑誌記事、広告、レシート。ゲーム名だけ読めない例が多発。
面識のない複数人が似たゲームを証言。研究室が最もざわつくランク。
一人の記憶だけに存在するゲーム。大半の発掘はここから始まります。
夢日記、幼少期の落書き、寝言。当同好会では普通に扱います。
複数人が同時に同じ題名を思い出すなど、現在の基準では説明不能。
※カセットを選択すると、研究発表・観測ログへ移動します。
禁止型アクションアドベンチャー
「絶対に押すな」と書かれたボタンが付属。押さなければ進まず、押した瞬間すべてが終わるという証言が同時に存在。
祖父探索アドベンチャー
行方不明の祖父を探すゲーム。ただしゲーム中に祖父本人が登場したという確実な証言は一件もありません。
組立式ゲーム
遊ぶ前にカセット自体を組み立てる異例の作品。ネジを締める順番でマップが変化したとの証言があります。
囁き系ダンジョンRPG
ソフトへ耳を近づけると自分の名前を呼ばれる。確認された「声」の内容は証言者ごとに異なります。
情報が一定量集まり次第、正式な研究対象として登録されます。
ゲームそのものより、攻略本だけ先に発見されることもあります。
聞いた人が「それ、なんか知ってる気がする」と感じる現象です。
気のせいを、重要な研究対象として調査します。
「はい/いいえの選択肢が、両方とも『いいえ』だったんだ。」
― 『起動神話ネバー』に関する証言
「パッケージ裏の画像に、主人公以外の誰も写ってなかった気がする。」
― 祖父のうろ覚え
「ソフトをフーフーしたら、海鳴りの音が聞こえた。」
― 『ささやきの洞窟』体験談
「バグ画面のモザイクの中に、うっすら『またね』って書いてあったような……。」
― 夢日記より
「攻略本は持ってた。でもゲームを持ってた記憶がない。」
― 学内聞き取り調査
「中古屋で手に取ったら別のゲームだった。でも一瞬だけ確かにそれだった。」
― ボロシゲ同好会OB
その年もっとも“存在したような気がした”ボロシゲを選出します。
※審査基準は毎年かなり変わります。一般的な中古店や通販ではほぼ見つかりません。ただし、実家の押し入れ、友達だったような人の家、記憶の引き出しから突然発見される可能性があります。
ボロシゲ共鳴反応の可能性があります。思い出すほど曖昧になる場合、その曖昧さを大切にしてください。
最高です。「敵が全部右を向いていた」「セーブすると怒られた」など、一部分だけでも重要な手掛かりです。
夢由来の資料はEランクとして正式に扱います。同じ夢を三回見た場合は回数も記録してください。
コマンド【なかまにする】を選択してください。タイトル一文字だけでも、不確かなほど歓迎します。
MESSAGE FROM BOROSHIGE CLUB
ボロシゲは、見つからないから終わるのではありません。
見つからないから、研究が始まります。
名前も分からないゲーム。誰にも通じなかった昔の記憶。遊んだような気がするだけの一本。
それはまだ、私たちが発見していない研究対象かもしれません。
PLEASE INSERT YOUR MEMORY.