気になったら数えろ
3人以上が同じ行動をしていた場合、統計調査の可能性があります。
あなたが今日、無意識にしたこと。おそらく、どうでもいいでしょう。
我々は、そこを調べます。
靴を右足から履きましたか?
□ YES □ NOエレベーターの「閉」ボタンを何回押しましたか?
□ YES □ NO冷蔵庫を開けてから、目的を忘れましたか?
□ YES □ NOおにぎりの海苔が割れないよう慎重に開けましたか?
□ YES □ NOティッシュを1枚取ったつもりが2枚取れましたか?
□ YES □ NO街角統計学部は、人類が「別に調べなくていい」と判断してきた日常の些細な現象を拾い上げ、全国規模のアンケート、独自指標、無駄に精密なグラフ、教授陣による必要以上に深い考察を通じて研究する学部です。
本学部が重要視するのは、研究対象の重要性ではありません。
数えられるかどうかです。
数える。分類する。円グラフにする。そして最後に教授が「この結果は、現代人の孤独を象徴しているのかもしれない」と言い始めます。
街角で迷ったときは、まず数えてください。
3人以上が同じ行動をしていた場合、統計調査の可能性があります。
調査開始時点で目的がなくても問題ありません。結果が出てから、それっぽい意味を探します。
45.8%という数字も棒グラフにすると、少しだけ研究らしくなります。
1,000人中997人が「普通」でも、注目するのは残り3人。そこには次の研究があります。
本学部において最も重い研究倫理規定です。
全3件の査読済み、または
査読した気になっている論文
GEOMETRY / PERSONALITY
人間の自己像を三種類の図形へ投影。現代社会における「心理的丸まり現象」が確認されました。
WEEKDAY / FOOD
月曜日は何味なのか。金曜日はなぜ焼肉なのか。曜日と食欲の関係を一週間かけて追跡しました。
KEY / APPETITE
家を守る鍵と、究極の食欲。人間は防犯と味覚のどちらを選ぶのかを問う緊急思考実験です。
学生・教授・たまたま通りかかった人々による観察は、現在も継続中です。
疑問の発見から必要以上の考察まで。再現性はともかく、携帯性に優れた独自の五段階方式です。
「すみません。あなたは
ティッシュを折りますか?」
「そういえば、みんなどうしてるんだろう」を研究候補として登録。
クリップボード、筆記具、予備の図形カード、昼食代を携行。
通行人の困惑した表情も、必要に応じて記録します。
円・棒・折れ線・散布図、またはよく分からない独自指数へ変換。
数字から現代社会の孤独まで話を広げたら、調査完了です。
平均値、中央値、標準偏差。
それだけでは足りない時に使います。
理由を説明できず「なんとなく」と回答した割合。
高いほど、優秀な研究テーマとされています。
調査後「言われてみれば気になる」と答えた比率。
5%未満の回答が持つ、妙なこだわりの強さ。
現在の最高記録は算羅和留教授。基準値は不明。
学部棟地下には、創設当時からの調査票と集計用紙が保存されています。
「捨てるほどでもない」— 資料室職員
かつては、二つ折り携帯を開いて何もせず閉じる回数、コンビニ袋を何枚ためると「ためすぎ」か、MDへ曲名を最後まで入力する割合なども研究されました。
「そんなもの調べてどうするんですか?」と聞かれる頻度だけは、創設以来ほぼ一定です。
数字の向こうに、
見えなくてよいものまで見ます。
さんら・わる 教授
専門:グラフ情緒統計学/幾何学的情緒分析
折れ線グラフの「折れ方」に人間の感情を見出します。グラフが急上昇すると少し元気になります。
「平均値には平均値なりの人生がある。」
ふでこ・みちる 教授
専門:文房具行動統計学/物質心理・行動制御
「人間は何で書くかによって人格の14%が決まる」と主張。的中率は不明です。
「書き味は、生き味です。」
ないれいこ・しのぶ 准教授
専門:冷蔵庫心理学/時間栄養統計
研究室の冷蔵庫で、2021年から同じプリンを継続観察中。誰も開けていません。
「賞味期限は、数字であって気持ちではない。」
2年「最初は「なんの意味があるの?」と思っていました。今は「意味がなさすぎて逆に意味があるのでは?」と思っています。」
4年「卒論は「靴下の左右どちらから履くかと人生選択傾向の相関」。母にはまだ説明できていません。」
1年「教授同士の雑談が全部、「それアンケート取ろう」で終わります。」
大学院生「3年間研究して分かったことは、人間は思った以上に「なんとなく」で生きているということです。」
よく聞かれる順かどうかは、
まだ統計を取っていません。
A四捨五入ができれば、かなり戦えます。電卓を使えばさらに安心です。
Aたまにします。
Aもちろんです。断った人の割合として集計される可能性があります。
A「地域特性」と呼びます。
A「予備調査」と呼びます。
Aその質問について現在アンケートを実施中です。
該当項目を数えてください。もちろん、その数も記録します。
一つでも当てはまれば、すでに本学部の素質があります。
街角統計学部が数え、カズバク研究会がさらに数えます。
「平成8年・好きな消しゴムの角ランキング」を捜索中。
○・△・□の比率から作った実験曲『幾何の歌』を学内放送。
研究員は今日も街角に立っています。質問は社会問題でも景気動向でもなく、
「肉まんを買ったとき、
最初の一口は上からですか? 横からですか?」
かもしれません。ですが我々は、その答えを記録し、集計し、グラフにし、必要以上に考えます。
人間のしょうもなさには、まだまだ数えられていないものがあるからです。