― 空間認識の揺らぎと“体感拡張島”という新概念 ―
目次
はじめに
うそこ島を訪れた多くの学生・研究者・観光未登録者が、共通して「思っていたより広い」と語る現象がある。
この“体感的広がり”は、錯覚・勘違い・脳内補正などの単純な現象では片付けられない持続性を伴っており、
学内では**「うそこ島内的広がり現象(Internal Island Expansion)」**と名付けられている。
証言記録から見る傾向
- 「海から見たときは“ピクニックにちょうどよさそう”だったのに、実際には“2泊3日の縦断コース”だった」
― 地理文化学部・1年 - 「うそこつを追いかけていたら、想定してた面積の5倍は歩いた気がする」
― うそこつ研究室・助手 - 「地図上で直線だった道が、歩くと“会話がひとつ終わる程度”の長さだった」
― 文学部・研究助手 綿野
仮説①:構造的メビウス化
一部の研究者は、島の地形が“わずかに捻じれている”と主張する。
これは数学的な意味でのメビウス構造ではなく、もっと曖昧で「気づかないうちに裏側を歩かされている」感覚のことを指す。
この構造は、歩いた分だけ“道が生成されている”可能性も指摘されている。
仮説②:記憶干渉による滞在時間延長
「島の中にいる間だけ記憶の時間軸が少し伸びる」という仮説もある。
実際、外部の記録装置では**“島内で過ごした時間より短いデータが残る”という報告が複数存在している。
これは、“密度の高い体験”=“広い空間を過ごした感覚”**という現象の可能性を示唆している。
観測所“う-0”での検証
観測所“う-0”では、2018年より「島内部での1歩の歩幅」と「外周から見た移動距離」の比較実験が行われている。
結果:平均誤差 約47.3%(誤差の範囲を超えている)
さらに「うそこ島を1周した学生が島の中心に戻ってきた」という不可解な記録も残っている。
“広がり”を利用した島内施設
施設名 | 概要 | 備考 |
---|---|---|
空気図書館・分館 | 行けば行くほど棚が増える | 最奥には“読みかけ”だけの棚があるらしい |
サークル共用ロッジ群 | 部屋数が利用者数に合わせて変動 | 鍵の番号も気づけば“ある程度フィットしてる” |
観測所“う-0” | 中央に向かって進むと周囲が増える錯覚 | 「歩くほど風が新しくなる」との証言も |
関連する島唄の存在
♪ 島に入れば ひとつ息をのむ
出たと思えば まだ入っていた
この唄の存在は、「島そのものが“包む”構造である」という文化的理解を反映している。
今後の研究方向
- ドローンによる外周飛行と内部滞在時間の同期実験
- 「島に入ったあと地図が縦に伸びて見える」症状の画像化研究
- “島の中心に何度も出くわす”現象の統計調査
- 外からの写真と、内部滞在者のスケッチの比較分析
おわりに
この「広がっている感覚」は、単なる体感だけでなく、うそこ島の本質的な性質を示す兆候かもしれない。
「思っていたより広い」という言葉にこそ、島の“なにか”が宿っているのかもしれない。