人物爆発型物語/特A級標本
お姫様100人 × 王子様100人人物過多構造研究
200名全員を主役として扱おうとした結果、童話が名簿・相関図・行政文書へ変質した事例
「登場人物を愛しすぎると、
物語は名鑑になる。」
カズバク研究会・文芸力学班
01 / SUMMARY
全員に名前がある。
全員に人生がある。
地方出版社「ミッチリ書房」から刊行された全1巻完結の児童向け恋愛童話『タクサーノ王国物語』。姫100名、王子100名の全員に、家族、魔法、好物、夢、初恋、相手を好きになった理由まで設定されている。
作者は「全員が主人公」と明言。本編32ページに対して人物名鑑64ページ、設定資料28ページ、索引16ページ。こうして本文より資料編が約3倍厚い童話が完成した。
- 作品名
- タクサーノ王国物語
- 副題
- 100の恋と100の約束
- 作者
- ミチシル・ベッタリーノ
- 出版社
- ミッチリ書房
- 刊行形態
- 全1巻
- 本編
- 32ページ
- 人物名鑑
- 64ページ
- 設定資料
- 28ページ
- 索引
- 16ページ
- 主要人物
- 200名
- 成立カップル
- 100組
- 失恋者
- 0名
02 / ORIGIN
ひとりの恋から、
200人へ。
編集者「どこかで止めませんか?」
作者「途中で止めたら、最後に作った子だけ恋ができなくてかわいそうです。」
03 / AUTHOR PHILOSOPHY
作者の人物平等主義
主要人物と脇役という概念を捨て、200人へほぼ均等な設定量を与えた。しかし、本編32ページという物理制約だけは平等に増えてくれなかった。
“名前を付けた瞬間、
その人物には人生があります。── ミチシル・ベッタリーノ
04 / GEOGRAPHY
タクサーノ王国
五地方調査
王国は100の小地域に分かれ、原則として各地域へ「姫1名+王子1名」を配置。
北の氷原地方
ユキナ姫 × グレイフ王子会話は「寒いね」「うん」の2語。設定資料には、その裏側の感情が約1,800字ある。
南の火山帯
ヒメグチ姫 × カガリ王子毎回口論する情熱ペア。「もう知らない!」と言いながら同じ方向へ歩いていく。
東の大森林
モクラン姫 × リーフ王子木とは話せるが人間同士は苦手。恋愛相談には森の木14本が参加する。
西の鉱山地帯
コバナ姫 × ガンリュウ王子初デートで地下430mへ。「地面は深いが恋愛進行度は浅い」と評価された。
王都タクサーノ
シリル姫 × ファルド王子表紙中央の第1姫と第1王子。ただし本編の登場割合は約100分の1。
05 / SELECTED CHARACTERS
研究価値の高い10名
200名全員を載せると、この研究報告まで人物名鑑になるため抜粋。
シリル・フォン・タクサーノ姫
最初に出てくる主人公4ページ目から他の姫が大量に登場し、主人公らしさを人数に譲る。
ファルド・レイン・タクサーノ王子
正統派ゆえに埋没剣術の得意な幼なじみ。正統派王子が100人いる作品では人気投票41位。
ミモナ・ミナモナ姫
鏡の湖出身口癖は「それ、ミモナ的にはアリかな」。相手はモナミ王子。
モナミ・モミナ王子
どっちがどっちミモナ姫と並ぶと、読者と校正担当者の短期記憶を同時に試す。
リリル・リルリラ姫
歌う姫ルリリ・ルルリル王子とセットで読むと、発音能力まで試される。
ルリリ・ルルリル王子
奏でる王子設定上は楽器の名手。名前の演奏難易度は設定以上に高い。
ポポロ・ポロポ姫
明るい姫ロポポ王子との組み合わせは「ポポロポロポ問題」と呼ばれる。
ロポポ・ロロポ王子
穏やかな王子人物より先に音の並びが記憶へ残る、校正部最大の難所。
ネムリーナ姫
告白中も睡眠最終ページでも眠っている。翌朝OKしたが、本編には描かれていない。
オワリオ王子
作者の終了願望最後に作られた王子。将来の夢は「静かに暮らすこと」。
06 / PAGE STRUCTURE
140ページのうち、
本編は32ページ。
1人あたり0.16ページ。二人一組でも0.32ページ。出会い、交流、葛藤、仲直り、告白を普通に描くことは物理的に不可能だった。
07 / STORY SYSTEM
人物過多対応システム
恋愛童話へ、データベース運用の考え方が導入された。
出演番号ガイド
ページ下部へ当日のP番号・R番号を記載。童話を読むたび巻末名鑑へ戻る。
六人上限制
1コマ最大6名。それ以上は誰の台詞か分からないため、目まぐるしく交代。
高速恋愛処理
「はじめまして」「素敵ですね」「結婚しましょう」の平均2〜3行で成立。
ナレーション圧縮
「その後いろいろあって」で17件を処理。研究会呼称は物語圧縮魔法。
08 / CHARACTER GUIDE
64pages姫王子完全名鑑
顔、名前、魔法、好物、夢、秘密、恋愛相手を全員ぶん収録。本編の2倍に達し、ついには「名鑑を売るために物語が付いている」構造へ変化した。
本編より名鑑の方が面白い。
09 / RELATIONSHIP MAP
846lines恋愛スパゲティ
恋愛・家族・友情・ライバル・師弟を追加した結果、人物の顔より線が目立った。相関図を見るための相関図が必要。
10 / NAME CONFUSION
名前の音が、
先に尽きる。
11 / THE FINAL PAGE
100組同時告白
春の満月、午後7時00分。誰かだけ先に幸せになるのは不公平という理由で、王国全土から「好きです!」と返事が同時に発生した。
第2刷 特製しおり型ルーペ付属王都観測所では「遠雷のような音」を記録。
12 / WEDDING PROBLEM
恋愛童話、
国家財政へ。
全員の恋が実った後にも、人数は減っていなかった。
新郎新婦200名と親族・友人・来賓で招待客約18,000名。会場がない。
10組ずつ10日間。互いに友人のため、多くの人物が10日連続で出席。
全員同額なら相殺できるという提案から、王室会計制度へ発展。
13 / REVIEWS & FANDOM
読者は泣き、
表計算を開いた。
名前より番号で推す「姫42推し」「CP-37推し」という文化が定着。
脳内メモリ限界
「3組目で無理だと思いました。でも読み終わる頃には、なぜか46組くらい覚えていました。」
Excel使用者
「これは恋愛童話ではありません。データベースです。途中から名前と恋愛相手を表で管理しました。」
感涙の迷子
「誰が誰なのか分からないのに、100組同時告白で泣きました。誰に感動したのか分かりません。」
読み聞かせをした親
「寝る前に1話だけと言われましたが、この本には「1話」という単位が存在しませんでした。」
名鑑派
「本編より人物名鑑を毎日読んでいます。最近はNo.83の王子が気になっています。」
人物の出番が短くても詳細設定が存在するため、マイナーキャラが生まれない。設定量が出番不足を補償する現象が確認された。
14 / MEDIA MIX
声まで平等に。
一人が数役を担当する案を作者が拒否。エンドロールの長さも問題となり企画凍結。
200人全員を収録。購入者から「もはや音声資料集」と評価された。
15 / RECOGNITION TEST
200名を10分後に
何人覚えているか
うそこ大学学生100名へ人物紹介を順番に提示。
10分後の平均記憶人数
20名以上を記憶
50名以上を記憶
100名以上を記憶
「似た名前が多すぎる」
「大勢いたことは覚えている」
最も記憶率が高かった人物:オワリオ王子理由「名前に作者の気持ちが出すぎているから」
16 / OVERLOAD ANALYSIS
詳しく描くために増やし、
誰か分からなくなる。
17 / LOVE DISTRIBUTION
キャラクター
愛情保存則
作者の愛情は無限でも、
ページ数は有限である。
18 / STORY CAPACITY LAB
32ページ童話の
Excel導入点
主要人物を増減し、一人あたりのページ配分と研究会判定を観測します。
- 一人あたり
- 0.16ページ
- 必要な補助資料
- Excel
判定:物語よりデータベースに近い状態です。
19 / THEOREMS
タクサーノ四法則
人物を増やし続けた王国から得られた、創作上の警告。
タクサーノ第一法則
登場人物が増えると世界観は豊かになるが、一定数を超えると読者は名簿を読んでいる感覚になる。
タクサーノ第二法則
キャラクター名の総数が増えるほど、使用可能な音の組み合わせは急速に怪しくなる。
タクサーノ第三法則
全員を平等に扱おうとすると、全員の出番が短くなる。
タクサーノ第四法則
相関図の線が人物の顔より目立ち始めたら、人物過多領域へ突入している。
20 / NEXT ISSUES
今後の研究課題
- 01200人へ均等に10分の出番を与えたアニメ総尺
- 02名前の音韻枯渇が始まる人数
- 03推し200人の年間グッズ費
- 04100組合同結婚式の最低面積
- 05846本の線を交差させない相関図
- 06200人分の誕生日ケーキ消費量
- 07全員のプレゼント交換総数
- 08王国人口に占める王族率
- 09王族200人国家の税制
- 10王位継承100位が即位する確率
- 11全員暗記に必要な再読回数
- 12作者は201人目で止まれるか
21 / FINAL DIAGNOSIS
物語構造分析カルテ
- 主要人物
- 200名
- カップル
- 100組
- 人物数圧
- 極大
- 相関図密度
- 恋愛スパゲティ級
- 本編密度
- 過剰圧縮
- Excel推奨度
- ★★★★★
世界観の豊かさを極限まで高める一方、一人あたりの描写を圧縮し、童話を人物名鑑・相関図・データベースへ変質させた。
人物爆発系特A級標本カズバク研究会・文芸力学班

