― 出汁(だし)と共に、舞う ―
競技概要
新体操の手具(てぐ)を、すべておでん種に置き換えた採点競技。選手は温かいおでん種を操りながら床上で舞い、技の難度・表現力、そして「出汁(だし)の保ち」を競う。演技中に種が冷めたり崩れたりすると減点される。優雅な舞いと、煮崩れとの終わりなき戦い。この二重苦こそが、おでん新体操の核である。
うそこ大学・西体育区画にある「おでん演武場」が国内唯一の公式会場。常時かつおだしの香りが館内を満たしており、見学者が空腹を訴える事例が後を絶たない。
手具(てぐ)=おでん種
新体操の五手具に対応する形で、それぞれおでん種が公式に割り当てられている。
| 新体操の手具 | おでん種 | 特性 |
|---|---|---|
| リボン | こんにゃく | ぷるぷる揺れる質感でしなやかな波打ち表現が映える。だが滑り落ちやすい難物。 |
| ボール | 大根 | 転がし・受けの技に。煮込みすぎると割れるため煮加減が命。 |
| フープ | ちくわ | 穴に腕や脚を通すくぐり技用。輪が小さく難度高め。 |
| こん棒 | 玉こんにゃくの串 | 唯一名前がほぼ据え置きの手具。回転技の主役。 |
| ロープ | 結び昆布 | 結び目を活かした絡め技・跳躍技に。ほどけると一発で乱れる。 |
煮込みの浅い「しっかり種」は扱いやすいが味が薄く表現点が伸びない。煮込みの深い「とろとろ種」は出汁が染みて美しいが崩れやすい。この煮加減の選択が、選手の戦術そのものとなる。
競技ルール
- 演技時間は90秒。手具を1〜2種選び、技を繋いで構成する。
- 演技中に種を床へ落とすと「種落ち(たねおち)」として減点。完全に煮崩れて原形を失うと「煮崩壊(にほうかい)」となり手具喪失=演技続行困難。
- 演技前に出汁温度を測定。規定温度を下回った種は「冷め手(さめて)」として減点対象。逆に熱すぎる種は選手が扱えず自滅する。
- 出汁が床に飛び散ると「汁こぼし」で美観減点。優雅さが命の競技ゆえ、地味に重い。
- 演技中に手具を口へ入れた者は即失格とする。
採点と用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 種落ち | 手具のおでん種を落とすミス。減点一発。 |
| 煮崩壊 | 種が崩れて原形を失い、手具として機能しなくなること。最重度のミス。 |
| 冷め手 | 演技中に種が冷め、出汁の艶(つや)が失われた状態。表現点が下がる。 |
| 染み映え | 出汁がよく染みた飴色の種で舞うと出る、美しさボーナス。 |
| 湯気残し | 演技終了時に種からまだ湯気が立っていると与えられる、鮮度の証の加点。 |
| 串さばき | 玉こんにゃくの串(こん棒)を操る手首の技術。回転の冴えを指す。 |
| とろけ落ち | とろとろに煮た種が演技半ばで崩れ落ちる、最も無念な失敗。 |
年間大会
- 春/菜の花おでん杯 春野菜の種限定。彩りも審査対象となる華やかな開幕戦。
- 夏/冷やしおでん演武 あえて冷たい出汁で舞う高難度の異端大会。冷め手減点と常に隣り合わせ。
- 秋/飴色選手権 じっくり煮込んだ染み種限定。染み映えを競う玄人好みの一戦。
- 冬/鍋納め(なべおさめ) 年間王者が演技後、全種を鍋に戻し観客と共に食す伝統行事。
過去の名勝負
「こんにゃくの涙」(2013年・全国決勝)
終盤、選手・煮村(にむら)のこんにゃくが汗で滑り、宙を舞って落下寸前に。だが煮村は床すれすれで結び昆布を投げ、その結び目でこんにゃくを空中で引っ掛けて回収、そのまま流れるような波打ち技へと繋げた。「落ちる種を、別の種で救う」という二手具連携の極致として、今なお語り継がれる伝説の演技である。
過去の珍事件
はんぺん消失事件(2010年) 選手がはんぺんを手具に選んだものの、軽すぎて演技中の動きで床にぴったり貼り付き、回収不能に。以後「はんぺんは手具不適格」とルールブックに明記された。
からし暴発事件(2018年) 審査員席に置かれたからしの小皿に選手の結び昆布が触れ、審査員が涙目で採点する事態に。「手具の薬味接触禁止」が追記された。
選手の声
はじめて結び昆布のロープ技が決まった瞬間、出汁が客席まで飛んで…でも誰も怒らないんです。「いい香りだ」って拍手が起きて。あ、これが演武場だなって。
大根をボールに選んだら本番で割れました。煮込みすぎたんです。煮加減は、人生です。
