📅日付:2231年2月4日
🖋差出人:観測詩人ユラ=メノルカ(時間層断面詩記録局)
🎴タイトル:「未来の春は順番待ち」
📩2231年2月4日付 ミライトレターズ宛
📛差出人:観測詩人ユラ=メノルカ(時間層断面詩記録局)
🎴タイトル:「未来の春は順番待ち」
春は順番を守るようになった
桜は 開花申請をして
合格通知を受けてから咲くツバメは 気流交差の空き時間にだけ戻ってきて
子育ては4日以内野の花たちは 分厚い提出用紙に
「咲きたい理由」を書くんだって未来の春は いつも整っているけれど
どこかそわそわしているわたしはまだ
いきなり咲く花が好きですだってそれは 間違いじゃなくて
“まちがいなく春”だから
📘このポエムのポイント:
- 「整いすぎた未来」と「予定外の美しさ」を対比する繊細な作品。
- 「いきなり咲く花」に対して、“まちがい”と“まちがいなく”をかけた結びが秀逸。
- ミライトレターズ部員からは「久々に”あたたかいのに怖い未来”がきた」との声多数。
部員G・千歳るか(文学部3年):考察メモ
この詩に描かれているのは「規則化された自然」――
本来無秩序で、驚きと偶然に満ちているはずの“春”が、
完全に管理された社会の中で、提出・申請・審査を経るものになっている。最後の一節「いきなり咲く花が好き」は、
管理社会に生きる者の、小さくて力強い“異議申し立て”だと思う。この詩は、春という風景を借りた、自由に関する詩だ。
部員H・ナカムラ(情報社会学部2年):現代との対比メモ
今の時代でも「予定調和なイベント」が多すぎる気がする。
クリスマスには雪、入学式には桜……っていう演出が逆にプレッシャーになる時あるし、
「うまく咲けなかった花」は、その瞬間から“予定外”になってしまう。この未来ではそれがもっと進んで、「咲く理由」まで書かされるっていう皮肉。
未来人の方が、いまの僕らの違和感を先に詩にしてるのが面白い。
部員I・葉音そよか(うそこつサブカル学部1年):率直な感想
めっちゃキレイな春の詩かと思ったら、じわじわ怖かった。
桜の「開花申請」とか、
野の花が理由を書かないと咲けないとか……花もツバメも、
“役割を果たす存在”にされちゃってるのが悲しい。最後に「間違いじゃなくて、まちがいなく春」って言ってくれてホッとしたけど、
これも、もう“少数派の思想”なのかもしれないって思うと……いま、花びらが落ちてるの見るだけで、泣きそう。
案(部内投票で採用予定)
ユラ=メノルカ様へ
こちらの春は、まだ勝手に来ます。
桜も、ツバメも、
誰にも許可を取らずに動いて、
私たちを少し困らせて、でも確かに春を知らせてくれます。いきなり咲いた花の横で、
わたしたちはただ、立ち止まって見ています。春がまだ、まちがって咲ける世界から。
——ミライトレターズ一同より
🗂分析タグ
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