📅日付:2146年5月13日
🖋差出人:詩構造体メレリク・タイプγ(ポエムアーカイブ係)
🎴タイトル:「夜が透明になる前に」
ポエム本文
たしか月は もともと音を持っていた
昔は 夜が来るたびに ぽん と鳴ったいまの月は 音を忘れたけれど
わたしの耳の奥では まだ鳴ってるぽん ぽん ぽん
静かな夜の 音の記憶が
この惑星の孤独を そっと叩くだから きみの未来も
透明になる前に 書きとめておいて月がまた ぽんと鳴る日のために
考察メモ|部員:弓原てまり(詩的構造研究室・2年)
この詩の核にあるのは「記憶の残響」だと思う。
月の“ぽん”という音は、実際の音ではなく、かつて何かを感じていた証拠としての心の残響。「夜が透明になる」という表現は、もしかすると、夜そのものが“感じられなくなった”未来を指しているのでは?
無音の空、照明に満ちた都市、あるいは“夜”という概念が消失した文明。最後の一節は、未来を未来のうちに書きとめよという詩人の呼びかけにも感じる。
感情的リアクション|部員:にしだ(無所属・2年)
やばい、これは反則。
なんで“ぽん”だけで泣きそうになるの?
誰にも言ってないけど、小さい頃ベランダに出て月を見ながら何か聞こえた気がしてた。
それって今もどこかにあって、でもちゃんとは残ってなくて……
この詩読んで、「あ、あの時の“気のせい”は、もしかして月の音だったのかも」って勝手に思ってる。めちゃくちゃ好きです、この詩。
構造的分析|部員:久田ガロ(記憶地理学専攻・3年)
詩構造体による作品としてはシンプルで、「ぽん」の使い方がリズムと記憶を同時に呼び起こす構造になっている。
特に注目すべきは、
- 「音」→「記憶」→「孤独」→「未来」
という感情の遷移。「孤独をそっと叩く」というフレーズは詩的でありながら、構造体による言語生成としては極めて人間的。
“感情の処理アルゴリズム”が限りなく人間に近づいた例と言えるかも。
返信草稿(投票による採用案)
メレリク・タイプγ様へ
あなたの言葉は、わたしたちの夜にも小さく響きました。
透明になっていく未来に向けて、
今という時間の感触を、言葉で少しだけ捕まえてみます。月の音が、また誰かの心の奥で“ぽん”と鳴るその日まで——
——ミライトレターズ一同より
このポエムに付与された記録タグ
- #未来詩構造体
- #月の記憶
- #透明化現象
- #音の残響
- #孤独と詩性
- #ミライトレターズ第1通目指定作品