
書籍情報
項目 | 内容 |
---|---|
書名 | 青春は変な町 |
著者 | 矢走 まがり(第44回 うそこ文学新人賞〈変則部門〉受賞) |
出版社 | うそこ文庫 |
発行年 | 20XX年春、町の広報誌『変な町だより』と同時刊行 |
分類コード | うそデュー 217.3(青春異常風土学) |
所蔵場所 | 北ウィング・にぎやか棚2段目(よく倒れる本の奥) |
閲覧状況 | 閲覧自由・貸出可(※ただし返却後、町に一度戻される仕組み) |
備考 | カバーを外すと「町の地図(変)」が現れる。何度見ても構造がおかしい。 |
ふるすじ
“ふるすじ”とは、冒頭からオチまで物語の全てをギュッと縮めたものです。
フルのあらすじ=略して、ふるすじ。
中学2年の夏、引っ越し先は「変町(へんちょう)」という地図にない町だった。
案内板は左右逆、時計台は0時で止まっていて、登校中にやたら犬に会う。
主人公・川本しんぺい(14)は、まず転校初日に「制服が野球ユニフォーム指定」という洗礼を受ける。
しかも学年主任はカカシで、誰もそのことを指摘しない。
それでも、しんぺいは徐々にこの町に馴染んでいく。
町には謎のルールがいくつもあり、
- 「夕方に笑うと翌日風邪をひく」
- 「月曜日だけ逆走していい道がある」
- 「好きな人には“干し芋”を渡すのが告白の合図」
転校生・ユウカは真面目な性格で、この町のルールにツッコみながらもしんぺいと惹かれ合っていく。
だが、ある日ユウカが言った。
「この町……“青春”って名前の病気みたい。」
町には“思春期が終わらない者だけが住める”という都市伝説があった。
そして、卒業式が近づくにつれ、クラスメイトが一人、また一人と徐々に“消えていく”。
写真からも、思い出からも、名前からも。
ユウカは消えかけていた。
「私、普通になりかけてるの。感情の振り幅が安定してきたの。」
しんぺいは彼女に告白するため、干し芋を100個集めて投げるという儀式を企てる。
卒業式の日。
体育館にはカカシが集まり、BGMはなぜか「セミの声」。
壇上に立ったしんぺいが叫んだ。
「青春は、変で、くだらなくて、でもそれでよかったんだー!!」
その瞬間、ユウカが現れ、干し芋を1個だけ受け取った。
二人はそのまま、変町の外れの坂道を駆け上がり、
その先で、町ごと消えた。
翌年、誰も変町のことを覚えていない。
ただ、川本しんぺいの机からは、一枚のプリントが見つかった。
「今日の給食:干し芋とミートボール」
関連蔵書リンク(町シリーズ&周辺ジャンル)
【変な町シリーズ】
- 『修学旅行は町から出られない』
→ 行き先が“町”の中だった修学旅行。その旅程が狂気と優しさに満ちていた。
【分類】うそデュー 217.4(閉鎖型社会青春記) - 『校則:カニは禁止』
→ 誰もカニを持ち込んだことがないのに存在する謎校則。その真相に迫る。
【分類】うそデュー 120.6(不条理教育考察) - 『町長は夢で選ばれる』
→ 町全体が集団夢を共有する制度の中で、新しい町長が誕生してしまう。
【分類】うそデュー 904.4(夢行政管理論)
【その他の“変則青春文学”】
- 『部室が毎日場所を変える件について』
→ たどり着けない部室と、そこにしか存在しない友情。切なくて笑える。
【分類】うそデュー 117.2(部活動異空間論) - 『最後のチャイムは笑っていた』
→ 校内にしか存在しない“笑うチャイム”が告げた最後の放課後。
【分類】うそデュー 015.5(音響現象感情史) - 『トマトだけが廊下にいる日』
→ 学校の廊下にだけ現れる巨大トマトと、その日だけ目が合わないあの子の話。
【分類】うそデュー 300.1(食物偶発青春学)
📝 うそこ図書館 司書メモ
本書は「1ページ目が既に回想シーン」「誰も変だと思っていない」という世界観の中で、なぜか読者だけが“居心地の良さ”を感じてしまう構造を持つ怪作。
地元で舞台モデルとなった町(のような何か)では、本作を「記録」と呼ぶ人が多いらしい。