選ばれし者の自己紹介研究 講義アーカイブ

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† 選ばれし者の
自己紹介研究 †

THE RHETORIC OF CHOSEN ONES SELF-INTRODUCTION

「名前を言うだけなら、名簿で足りる。
自己紹介とは、自らの宿命を他者の記憶へ刻む儀式だ。」―― 白影鏡夜教授・初回講義
CODECND-104CREDITS2単位LECTURER白影 鏡夜 教授

RITUAL 00 / SELF-INTRODUCTION BUILDER

† 選ばれし者・
自己紹介構築陣 †

六つの要素を組み合わせ、必要以上に事情のありそうな自己紹介を錬成します。

IDENTITY RECORD† 錬成結果 †
「俺は影鳴シオン。
……“夜を統べる咆哮”なんて呼ばれてるが、それは今の俺の話じゃない。
本当の俺はまだ目覚めていない。現在の封印率は68%。
――今話しているのは“あいつ”が眠っている間だけだ。
その名だけは、覚えておけ。」
自己紹介危険度★★★★☆周囲の反応予測「あ、はい。よろしくお願いします」

LECTURE OVERVIEW

説明ではなく、未説明設定を残す。

一般的な自己紹介は、名前・出身・趣味・所属を簡潔に伝えます。しかし我々が知りたいのは、なぜその名で呼ばれるのか、右腕をなぜ押さえるのか、本名以外に三つ名前があるのか、そして今喋っているあなたは本当にあなたなのかです。

本講義では中二病的自己紹介を、言語学・演劇学・人格表現論・異名学・沈黙技法から体系化します。最終目標は、名前を伝えただけなのに、相手へ大量の未説明設定を残すこと。

01-A

† 自己紹介・六段構成 †

01
STAGE 01

本名提示

「俺は神代レン。」

相手へ最低限の足場を与えます。ここではまだ普通。

02
STAGE 02

異名追加

「……一部では、“終焉を視る者”と呼ばれている。」

本名以外の名称を提示し、急激に事情を増やします。

03
STAGE 03

異名否定

「まあ……俺はその呼び名を気に入ってるわけじゃない。」

本人が勝手に名乗っている感を減少させる重要技法。

04
STAGE 04

封印・制限提示

「今の俺は、力の73%を封じている。」

現在は本来の状態ではないことを示します。

05
STAGE 05

多層人格提示

「……俺の中の“ヤツ”が出てきたら話は別だ。」

自己紹介なのに、登場人物が増えます。

06
STAGE 06

意味深に終了

「まあ、いずれ分かる。」

何も分かっていません。しかし完成です。

THE CHOSEN-ONE FORMULA

選ばれし者感 =

異名 × 未説明設定 ×× 自己否定 × 封印率 ÷ 説明量

仕様書「右手には摂氏800度の火球を3発撃てる能力がある」改善「右手か……悪いが、それについてはまだ話せない。」
情報を減らすほど、設定は増える。

DUAL PERSONA PHRASING

† DPP・多層人格構文 †

人は一人です。しかし中二病自己紹介では、必ずしも一人である必要はありません。

DPP0
「俺は田中です。」

推定人格数1

単独人格。名簿どおり。
DPP1
「俺は田中。でも、本当の俺はこんなんじゃない。」

推定人格数1.3

現在の自己を仮置きにします。
DPP2
「今の俺は、“表側”にすぎない。」

推定人格数2前後

裏側の存在が発生。
DPP3
「俺の中には、もう一人いる。」

推定人格数明確に2

内部人格の存在を明言。
DPP4
「もう一人の俺も、“あいつ”を恐れている。」

推定人格数最低3

教授会曰く、自己紹介にしては人が多い。
DPP5
「……今、誰と話しているつもりだ?」

推定人格数測定不能

名簿管理上の危険領域。
02-A

「もう一人の俺」の呼称研究

01

もう一人の俺

基本形。親しみやすい。

02

ヤツ

敵対的。「ヤツが目覚める前に離れろ」。

03

あいつ

若干、過去に何かありそう。

04

中にいる者

本人も正体を把握していない雰囲気。

05

本当の俺

現在の自分を仮の姿にできます。

06

“彼”

かなり意味深。「……“彼”は君を知っているようだ」。

02-B

† 異名導入学 †

LEVEL1
初級
「“黒の剣士”と呼ばれています。」

素直です。

LEVEL2
中級
「一部では……“黒の剣士”なんて呼ばれている。」

自分で付けていない感が生まれます。

LEVEL3
上級
「その名で呼ぶな。……“黒の剣士”はもう死んだ。」

急に過去編が始まりました。

LEVEL4
特級
「……誰からその名を聞いた?」

相手はまだ何も言っていません。

WHO NAMED YOU?

異名は誰が付けたのか問題

「俺は“深淵の死神”だ」と名乗ると、本人命名疑惑が発生します。

第三者命名型
「昔の奴らは、そう呼んでいた。」
敵勢力命名型
「俺を恐れた連中が勝手につけた名だ。」
本人不本意型
「好きでそう呼ばれてるわけじゃない。」
名称由来不明型
「気づいた時には……そう呼ばれていた。」
02-C

† 封印率学・数字の魔力 †

100%
完全封印。何もできなさそう。
99%
強い。しかし出来すぎ。
80%
かなり良い。
72%
非常に良い。根拠が不明。
68%
最も人気。細かさと謎の均衡。
50%
普通すぎる。
0%
封印されていない。危険。
02-D

† シラバス †

CND-104/全13回
テーマ学習内容
01自己紹介とは何か名乗りと自己演出の基礎
02名前の提示本名・仮名・真名の使い分け
03異名導入法 I二つ名を自然に会話へ入れる
04異名導入法 II「自分で付けた感」を消す技術
05DPP入門「もう一人の俺」の基本構造
06多層人格応用三人目以降の内部人格管理
07封印率学もっとも意味深な数値設定
08沈黙技法自己紹介中の「……」を演じる
09視線演習窓、右手、遠方などを見る技術
10選ばれし者の自然な名乗り宿命を押し付けず匂わせる
11自己紹介事故研究盛りすぎ・説明しすぎを修正
12実地演習初対面の相手に設定を残す
13自己紹介試技教室全体の空気を変える期末発表

VOICE / PAUSE / GAZE

† 名乗りの演技技法 †

TRUE NAME THEORY

真名論

本名とは別に真の名前を設定すると、中二性は急上昇します。

「俺は佐藤拓也。」「佐藤拓也……それが今の名だ。」「真名は別にある。だが、この世界の発音体系では再現できない。」

教えられない理由:魂を支配される/契約成立/封印解除/世界線の乱れ/人間には発音不能/教授もまだ決めていない

THE POWER OF PAUSE

自己紹介における「間」

普通
「俺は影鳴シオンです。よろしく。」
5秒情報は届きます。
中級
「俺は……影鳴シオン。よろしく。」
8秒少し過去が生まれます。
上級
「俺は……影鳴……いや。今はまだ、シオンとだけ名乗っておこう。」
16秒聞き手:「?」
特級
「窓3秒、右手2秒、閉眼4秒。「……名前、か。」」
名前未提示まだ名乗っていません。

GAZE DIRECTION

視線演習

相手を見る

普通。

5
窓の外を見る

過去がありそう。

42
自分の右腕を見る

何か封印されていそう。

68
天井を見る

何かの声を聞いていそう。

73
誰もいない場所を見る

かなり危険。

95
背後を見る

聞き手もつられて振り返る高等技法。

86
03-A

† 普通の自己紹介・段階的中二化実験 †

原文「山田健です。ゲームが好きです。よろしくお願いします。」
20%
「山田健です。ゲームが好きです。まあ、よろしく。」
若干態度が変わっただけ。
40%
「山田健。ゲームは……まあ、嫌いじゃない。」
何か隠しています。
60%
「山田健。今はその名前を使っている。ゲーム……そう呼ばれてるものなら多少は知ってる。」
なぜそう呼ぶ。
80%
「山田健……それが今の俺の名だ。向こうでは別の名で呼ばれていた。ゲーム? ……似たような“戦い”なら経験がある。」
向こうとは。
100%
「山田健――この世界では、そう名乗っている。以前は“第七遊戯領域の観測者”と呼ばれていた。好き嫌いで戦場には立てない。今はまだ、それだけ覚えておけ。」
聞き手:「趣味はゲームって書いときますね」
03-B

† 自己紹介・失敗例研究 †

CASE A

全部説明してしまう

BEFORE

「俺は闇龍カイト。中に悪魔がいて、右手に炎の能力があって――」

AFTER

「カイトだ。……それ以上は、知らない方がいい。」

聞かれていない情報が多く、謎がありません。
CASE B

異名を自慢してしまう

BEFORE

「俺の二つ名、めっちゃかっこよくて“漆黒の破壊神”っていうんだけどさ!」

AFTER

「……その名は捨てたはずなんだけどな。」

嬉しそうにしないこと。
CASE C

相手にも設定を要求する

BEFORE

「君の魔力属性は?」

AFTER

「まず名前を聞く。」

初対面では危険です。
CASE D

封印率を毎回変える

BEFORE

「昨日67%/今日74%/昼51%」

AFTER

「表を作れ。」

設定管理が必要になります。

PROFESSOR'S RED PEN

† 自己紹介添削室 †

学生原稿:「黒崎零夜。闇の帝王。右腕に暗黒龍がいて、世界を滅ぼせる。」

「私は、黒崎零夜。……“帝王”という名はもう使わない。右腕? ……どこでそれを聞いた。」
削れ。語るな。相手に想像させろ。

「俺には秘密があります。」

「……それは話せない。」

「昔、とても大変な戦いをしました。」

「昔の話だ。」

「俺の中には別人格がいます。」

「今の俺を、俺だと思わない方がいい。」
03-C

† 自己紹介テンプレート †

01初級型
「俺は【名前】。一部では【異名】なんて呼ばれている。まあ……気にしないでくれ。」
02封印型
「【名前】だ。今は力の【封印率】%を封じている。……理由は聞かない方がいい。」
03多層人格型
「俺は【名前】。ただし、今話している俺がすべてだと思うな。“【内なる存在】”が目覚めるまではな。」
04過去あり型
「昔は【異名】と呼ばれていた。……でも、その名はもう捨てた。今は【名前】。それだけでいい。」
05特級・全部乗せ型
「【名前】。この世界ではそう名乗っている。“【異名】”は忘れてくれ。封印率【封印率】%。まだ【内なる存在】も眠っている。――今は、な。」

会話開始

名前、か……/今はそう名乗っている/この世界では、な/……まあいい

過去匂わせ

昔の話だ/もう捨てた名だ/その名をどこで聞いた/あの頃の俺はもういない

内なる存在

まだ眠っている/今は静かだ/あいつが出てこなければな/……今、笑ったか?

会話終了

いずれ分かる/今はそれでいい/これ以上は話せない/その時まで覚えておけ

不要情報

郵便番号/詳細な住所/学籍番号/普通の電話番号/具体的な睡眠時間/好きな給食/ポイントカード

「学籍番号」ではなく「識別番号」と言えば、一部救済できます。

ARCHIVE OF PERFORMANCE

† 試技・事故・相手別研究 †

PREVIOUS YEAR / SCORE 96

前年度最高得点

「オレは影鳴シオン。……“夜を統べる咆哮”って呼ばれてるけど、それはオレじゃない。本当のオレはまだ檻の中だ。封印率……68%。今喋ってるのはオレの“表側”だからな。」

減点理由:「最後に『よろしく』と言ってしまった。」

1第8回 最優秀賞
「俺は如月零。……いや、その名前で呼ばれるのは久しぶりだ。」

講評:一文目から過去を作った点を評価。

2第12回 最優秀賞
「名前はない。少なくとも、“まだ”な。」

講評:大学の学生証には普通に名前が記載されていた。

3第16回 特別賞
「教師「名前をお願いします」 学生「……誰の?」」

講評:DPPの極致。

04-A

⚠ 過去の授業事故

CASE 01

47秒沈黙事故

窓の外を見たまま47秒沈黙。教授「少し長い」

設定・本人とも復旧済み
CASE 02

人格見失い事案

「俺の中のヤツ」を演じ、本人がどちらの人格だったか分からなくなる。講義後は普通に学食へ。

設定・本人とも復旧済み
CASE 03

未呼称への抗議

「その名で俺を呼ぶな!」と叫ぶ。相手「まだ呼んでないです」

設定・本人とも復旧済み
CASE 04

98.7%設定崩壊

「普段ほぼ何もできないのでは?」と問われ、設定崩壊。

設定・本人とも復旧済み
CASE 05

真名・16分会議

「人間には発音できない」と言った学生へ「では君はどう知った?」と質問。

設定・本人とも復旧済み
04-B

† 相手別自己紹介研究 †

新しいクラス40〜60%

少しだけ何かを残す。

中二病学部内70〜90%

受け止める準備があります。

就職面接0〜3%

本名と志望動機を優先。

ゲーム仲間80%

世界観共有が成立しやすい。

家族測定不能

ほぼ全部知っています。

母親0%

「またそれやってるの?」最大の天敵。

04-C

† 評価基準・実践課題 †

25%

設定整合性

20%

未説明部分の魅力

15%

異名導入の自然さ

15%

「間」と視線

15%

DPP多層人格構文

10%

教授の中の“彼”が震えたか

TASK 01

異名を自作と思われない形で自己紹介へ導入せよ。

TASK 02

「魔王の血・右腕の炎龍・満月覚醒」を、情報量半分で設定量二倍に見せよ。

TASK 03

61〜79%から封印率を選び、理由を説明せず自己紹介へ入れよ。

TASK 04

もう一人の自分を出しながら、人格数を最後まで確定させるな。

TASK 05

自己紹介中に最低5秒沈黙せよ。ただし心配された場合は失格。

MIDTERM EXAM

† 中間試験 †

問1

最も優れた自己紹介を選べ。A「鈴木です」 B「暗黒騎士です」 C「鈴木……いや、今は零夜でいい」 D「闇属性Lv92の鈴木です」

模範:C/何も分からないため。
問2

「俺の秘密を説明します」を改善せよ。

問3

封印率・異名・真名・内なる人格・過去の因縁をすべて使い、80文字以内で名乗れ。

FINAL PRACTICAL / 90 SECONDS

† 期末実技試験 †

自己紹介だけで、教室全体へ
「こいつ何かあるぞ」と思わせる。
必須要素

名前/異名/3秒以上の沈黙/未説明設定/視線移動/封印または覚醒

禁止事項

全部説明/笑ってごまかす/「中二病です」と言う/PowerPoint 45枚/世界設定資料集の配布

REQUIRED GRIMOIRES

† 指定教材・魔導書 †

01

『異名と人格分裂の文体論』

白影 鏡夜 著/虚無書房

02

『心に住まう影たち――多層自己表現の美学』

中二語学会 編

03

『68%という数字』

白影研究室 編/半分が68%の考察

04

『名乗るな、匂わせろ』

白影 鏡夜 著

05

『初対面で“ヤツ”を出すな』

中二病コミュニケーション学会 編

06

『自己紹介専用詠唱ノート』

表紙:完全漆黒/名前欄:「真名」

WORDS IN THE MARGIN

† 講義ノート †

#01「名前は情報だ。異名は物語だ。」
#02「自分から“謎があります”と言うな。謎を残せ。」
#03「設定は説明した瞬間、設定になる。説明しなければ伝説になる。」
#04「「昔の話だ」ほど安価に過去編を作れる言葉はない。」
#05「68%には理由があるように見える。理由はなくていい。」
#06「自己紹介で人格を増やしすぎるな。名簿が困る。」
#07「沈黙は無料だ。使え。」
#08「右腕を見るだけで説明を一行減らせる。」
PROFESSOR / PROFILE

白影 鏡夜 教授

専門:多層人格表現論・異名コミュニケーション学

「君たちは自己紹介で喋りすぎる。名前を言え。少し黙れ。窓の外を見ろ。そして『昔の話だ』と言え。それだけで、人間は勝手に過去を想像する。」

「人は皆、自分という物語の主人公だ。だから少しくらい、自分を特別な存在として語ったっていい。ただし、初対面の相手には加減しろ。相手も自己紹介したいからな。

白影教授・最終講義

FINAL CONFIRMATION

† 帰還前の最終確認 †

あなたは、選ばれし者ですか?

選択してください。――答えがあるとは限りません。