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† 選ばれし者の
自己紹介研究 †
THE RHETORIC OF CHOSEN ONES SELF-INTRODUCTION
「名前を言うだけなら、名簿で足りる。
自己紹介とは、自らの宿命を他者の記憶へ刻む儀式だ。」―― 白影鏡夜教授・初回講義
RITUAL 00 / SELF-INTRODUCTION BUILDER
† 選ばれし者・
自己紹介構築陣 †
六つの要素を組み合わせ、必要以上に事情のありそうな自己紹介を錬成します。
「俺は影鳴シオン。68
……“夜を統べる咆哮”なんて呼ばれてるが、それは今の俺の話じゃない。
本当の俺はまだ目覚めていない。現在の封印率は68%。
――今話しているのは“あいつ”が眠っている間だけだ。
その名だけは、覚えておけ。」
LECTURE OVERVIEW
説明ではなく、未説明設定を残す。
一般的な自己紹介は、名前・出身・趣味・所属を簡潔に伝えます。しかし我々が知りたいのは、なぜその名で呼ばれるのか、右腕をなぜ押さえるのか、本名以外に三つ名前があるのか、そして今喋っているあなたは本当にあなたなのかです。
本講義では中二病的自己紹介を、言語学・演劇学・人格表現論・異名学・沈黙技法から体系化します。最終目標は、名前を伝えただけなのに、相手へ大量の未説明設定を残すこと。
† 自己紹介・六段構成 †
本名提示
「俺は神代レン。」
相手へ最低限の足場を与えます。ここではまだ普通。
異名追加
「……一部では、“終焉を視る者”と呼ばれている。」
本名以外の名称を提示し、急激に事情を増やします。
異名否定
「まあ……俺はその呼び名を気に入ってるわけじゃない。」
本人が勝手に名乗っている感を減少させる重要技法。
封印・制限提示
「今の俺は、力の73%を封じている。」
現在は本来の状態ではないことを示します。
多層人格提示
「……俺の中の“ヤツ”が出てきたら話は別だ。」
自己紹介なのに、登場人物が増えます。
意味深に終了
「まあ、いずれ分かる。」
何も分かっていません。しかし完成です。
選ばれし者感 =
異名 × 未説明設定 × 間 × 自己否定 × 封印率 ÷ 説明量
DUAL PERSONA PHRASING
† DPP・多層人格構文 †
人は一人です。しかし中二病自己紹介では、必ずしも一人である必要はありません。
「俺は田中です。」
推定人格数1
単独人格。名簿どおり。「俺は田中。でも、本当の俺はこんなんじゃない。」
推定人格数1.3
現在の自己を仮置きにします。「今の俺は、“表側”にすぎない。」
推定人格数2前後
裏側の存在が発生。「俺の中には、もう一人いる。」
推定人格数明確に2
内部人格の存在を明言。「もう一人の俺も、“あいつ”を恐れている。」
推定人格数最低3
教授会曰く、自己紹介にしては人が多い。「……今、誰と話しているつもりだ?」
推定人格数測定不能
名簿管理上の危険領域。「もう一人の俺」の呼称研究
もう一人の俺
基本形。親しみやすい。
ヤツ
敵対的。「ヤツが目覚める前に離れろ」。
あいつ
若干、過去に何かありそう。
中にいる者
本人も正体を把握していない雰囲気。
本当の俺
現在の自分を仮の姿にできます。
“彼”
かなり意味深。「……“彼”は君を知っているようだ」。
† 異名導入学 †
「“黒の剣士”と呼ばれています。」
素直です。
「一部では……“黒の剣士”なんて呼ばれている。」
自分で付けていない感が生まれます。
「その名で呼ぶな。……“黒の剣士”はもう死んだ。」
急に過去編が始まりました。
「……誰からその名を聞いた?」
相手はまだ何も言っていません。
WHO NAMED YOU?
異名は誰が付けたのか問題
「俺は“深淵の死神”だ」と名乗ると、本人命名疑惑が発生します。
「昔の奴らは、そう呼んでいた。」
「俺を恐れた連中が勝手につけた名だ。」
「好きでそう呼ばれてるわけじゃない。」
「気づいた時には……そう呼ばれていた。」
† 封印率学・数字の魔力 †
† シラバス †
| 回 | テーマ | 学習内容 |
|---|---|---|
| 01 | 自己紹介とは何か | 名乗りと自己演出の基礎 |
| 02 | 名前の提示 | 本名・仮名・真名の使い分け |
| 03 | 異名導入法 I | 二つ名を自然に会話へ入れる |
| 04 | 異名導入法 II | 「自分で付けた感」を消す技術 |
| 05 | DPP入門 | 「もう一人の俺」の基本構造 |
| 06 | 多層人格応用 | 三人目以降の内部人格管理 |
| 07 | 封印率学 | もっとも意味深な数値設定 |
| 08 | 沈黙技法 | 自己紹介中の「……」を演じる |
| 09 | 視線演習 | 窓、右手、遠方などを見る技術 |
| 10 | 選ばれし者の自然な名乗り | 宿命を押し付けず匂わせる |
| 11 | 自己紹介事故研究 | 盛りすぎ・説明しすぎを修正 |
| 12 | 実地演習 | 初対面の相手に設定を残す |
| 13 | 自己紹介試技 | 教室全体の空気を変える期末発表 |
VOICE / PAUSE / GAZE
† 名乗りの演技技法 †
真名論
本名とは別に真の名前を設定すると、中二性は急上昇します。
教えられない理由:魂を支配される/契約成立/封印解除/世界線の乱れ/人間には発音不能/教授もまだ決めていない
THE POWER OF PAUSE
自己紹介における「間」
「俺は影鳴シオンです。よろしく。」5秒情報は届きます。
「俺は……影鳴シオン。よろしく。」8秒少し過去が生まれます。
「俺は……影鳴……いや。今はまだ、シオンとだけ名乗っておこう。」16秒聞き手:「?」
「窓3秒、右手2秒、閉眼4秒。「……名前、か。」」名前未提示まだ名乗っていません。
GAZE DIRECTION
視線演習
普通。
5過去がありそう。
42何か封印されていそう。
68何かの声を聞いていそう。
73かなり危険。
95聞き手もつられて振り返る高等技法。
86† 普通の自己紹介・段階的中二化実験 †
「山田健です。ゲームが好きです。まあ、よろしく。」若干態度が変わっただけ。
「山田健。ゲームは……まあ、嫌いじゃない。」何か隠しています。
「山田健。今はその名前を使っている。ゲーム……そう呼ばれてるものなら多少は知ってる。」なぜそう呼ぶ。
「山田健……それが今の俺の名だ。向こうでは別の名で呼ばれていた。ゲーム? ……似たような“戦い”なら経験がある。」向こうとは。
「山田健――この世界では、そう名乗っている。以前は“第七遊戯領域の観測者”と呼ばれていた。好き嫌いで戦場には立てない。今はまだ、それだけ覚えておけ。」聞き手:「趣味はゲームって書いときますね」
† 自己紹介・失敗例研究 †
全部説明してしまう
「俺は闇龍カイト。中に悪魔がいて、右手に炎の能力があって――」
「カイトだ。……それ以上は、知らない方がいい。」
異名を自慢してしまう
「俺の二つ名、めっちゃかっこよくて“漆黒の破壊神”っていうんだけどさ!」
「……その名は捨てたはずなんだけどな。」
相手にも設定を要求する
「君の魔力属性は?」
「まず名前を聞く。」
封印率を毎回変える
「昨日67%/今日74%/昼51%」
「表を作れ。」
PROFESSOR'S RED PEN
† 自己紹介添削室 †
学生原稿:「黒崎零夜。闇の帝王。右腕に暗黒龍がいて、世界を滅ぼせる。」
「私は、黒崎零夜。……“帝王”という名はもう使わない。右腕? ……どこでそれを聞いた。」削れ。語るな。相手に想像させろ。
「俺には秘密があります。」
↓「……それは話せない。」「昔、とても大変な戦いをしました。」
↓「昔の話だ。」「俺の中には別人格がいます。」
↓「今の俺を、俺だと思わない方がいい。」† 自己紹介テンプレート †
01初級型
「俺は【名前】。一部では【異名】なんて呼ばれている。まあ……気にしないでくれ。」
02封印型
「【名前】だ。今は力の【封印率】%を封じている。……理由は聞かない方がいい。」
03多層人格型
「俺は【名前】。ただし、今話している俺がすべてだと思うな。“【内なる存在】”が目覚めるまではな。」
04過去あり型
「昔は【異名】と呼ばれていた。……でも、その名はもう捨てた。今は【名前】。それだけでいい。」
05特級・全部乗せ型
「【名前】。この世界ではそう名乗っている。“【異名】”は忘れてくれ。封印率【封印率】%。まだ【内なる存在】も眠っている。――今は、な。」
会話開始
名前、か……/今はそう名乗っている/この世界では、な/……まあいい
過去匂わせ
昔の話だ/もう捨てた名だ/その名をどこで聞いた/あの頃の俺はもういない
内なる存在
まだ眠っている/今は静かだ/あいつが出てこなければな/……今、笑ったか?
会話終了
いずれ分かる/今はそれでいい/これ以上は話せない/その時まで覚えておけ
郵便番号/詳細な住所/学籍番号/普通の電話番号/具体的な睡眠時間/好きな給食/ポイントカード
「学籍番号」ではなく「識別番号」と言えば、一部救済できます。ARCHIVE OF PERFORMANCE
† 試技・事故・相手別研究 †
前年度最高得点
「オレは影鳴シオン。……“夜を統べる咆哮”って呼ばれてるけど、それはオレじゃない。本当のオレはまだ檻の中だ。封印率……68%。今喋ってるのはオレの“表側”だからな。」
減点理由:「最後に『よろしく』と言ってしまった。」
「俺は如月零。……いや、その名前で呼ばれるのは久しぶりだ。」
講評:一文目から過去を作った点を評価。
「名前はない。少なくとも、“まだ”な。」
講評:大学の学生証には普通に名前が記載されていた。
「教師「名前をお願いします」 学生「……誰の?」」
講評:DPPの極致。
⚠ 過去の授業事故
47秒沈黙事故
窓の外を見たまま47秒沈黙。教授「少し長い」
設定・本人とも復旧済み人格見失い事案
「俺の中のヤツ」を演じ、本人がどちらの人格だったか分からなくなる。講義後は普通に学食へ。
設定・本人とも復旧済み未呼称への抗議
「その名で俺を呼ぶな!」と叫ぶ。相手「まだ呼んでないです」
設定・本人とも復旧済み98.7%設定崩壊
「普段ほぼ何もできないのでは?」と問われ、設定崩壊。
設定・本人とも復旧済み真名・16分会議
「人間には発音できない」と言った学生へ「では君はどう知った?」と質問。
設定・本人とも復旧済み† 相手別自己紹介研究 †
少しだけ何かを残す。
受け止める準備があります。
本名と志望動機を優先。
世界観共有が成立しやすい。
ほぼ全部知っています。
「またそれやってるの?」最大の天敵。
† 評価基準・実践課題 †
設定整合性
未説明部分の魅力
異名導入の自然さ
「間」と視線
DPP多層人格構文
教授の中の“彼”が震えたか
異名を自作と思われない形で自己紹介へ導入せよ。
「魔王の血・右腕の炎龍・満月覚醒」を、情報量半分で設定量二倍に見せよ。
61〜79%から封印率を選び、理由を説明せず自己紹介へ入れよ。
もう一人の自分を出しながら、人格数を最後まで確定させるな。
自己紹介中に最低5秒沈黙せよ。ただし心配された場合は失格。
† 中間試験 †
最も優れた自己紹介を選べ。A「鈴木です」 B「暗黒騎士です」 C「鈴木……いや、今は零夜でいい」 D「闇属性Lv92の鈴木です」
模範:C/何も分からないため。「俺の秘密を説明します」を改善せよ。
封印率・異名・真名・内なる人格・過去の因縁をすべて使い、80文字以内で名乗れ。
FINAL PRACTICAL / 90 SECONDS
† 期末実技試験 †
自己紹介だけで、教室全体へ「こいつ何かあるぞ」と思わせる。
名前/異名/3秒以上の沈黙/未説明設定/視線移動/封印または覚醒
全部説明/笑ってごまかす/「中二病です」と言う/PowerPoint 45枚/世界設定資料集の配布
REQUIRED GRIMOIRES
† 指定教材・魔導書 †
『異名と人格分裂の文体論』
白影 鏡夜 著/虚無書房
『心に住まう影たち――多層自己表現の美学』
中二語学会 編
『68%という数字』
白影研究室 編/半分が68%の考察
『名乗るな、匂わせろ』
白影 鏡夜 著
『初対面で“ヤツ”を出すな』
中二病コミュニケーション学会 編
『自己紹介専用詠唱ノート』
表紙:完全漆黒/名前欄:「真名」
WORDS IN THE MARGIN
† 講義ノート †
#01「名前は情報だ。異名は物語だ。」
#02「自分から“謎があります”と言うな。謎を残せ。」
#03「設定は説明した瞬間、設定になる。説明しなければ伝説になる。」
#04「「昔の話だ」ほど安価に過去編を作れる言葉はない。」
#05「68%には理由があるように見える。理由はなくていい。」
#06「自己紹介で人格を増やしすぎるな。名簿が困る。」
#07「沈黙は無料だ。使え。」
#08「右腕を見るだけで説明を一行減らせる。」
白影 鏡夜 教授
専門:多層人格表現論・異名コミュニケーション学
「君たちは自己紹介で喋りすぎる。名前を言え。少し黙れ。窓の外を見ろ。そして『昔の話だ』と言え。それだけで、人間は勝手に過去を想像する。」
「人は皆、自分という物語の主人公だ。だから少しくらい、自分を特別な存在として語ったっていい。ただし、初対面の相手には加減しろ。相手も自己紹介したいからな。」
白影教授・最終講義
FINAL CONFIRMATION
† 帰還前の最終確認 †
あなたは、選ばれし者ですか?
選択してください。――答えがあるとは限りません。