フルイモノ通りには、夕方になると現れる幽霊がいるという。
名前もなく、性別も定かでなく、ただ「失恋の匂いがする」と言われている。
この幽霊は、人が置いていった“未練”を好んで食べるという。とくに、両想いになれなかった片想いを蒸して食べるのが一番好きらしい。
蒸し器にかけられた想いは、どこかコンビニのからあげ棒の匂いがして、夜道でふとそれを感じた者は、すぐさま昔の失恋を思い出すのだという。
実際に体験したという女性(20代・仮名「さっちん」)は、こう語る。
「昔好きだった人を思い出して、泣いてたら、ベランダにからあげの匂いがして。次の日、夢に出てきたの。“蒸して食べたよ”って幽霊が言ってました」
幽霊は満足そうだったという。
それ以来、彼女は誰にも恋をしていない。